前話でお話しした通り、パラダイスのような職場に入れた私。
でも、人間というのは勝手なものです。
慣れてくると、見えてくるものがある。
そしてあの頃の私は、じわじわと追い詰められていきました。

全方位からのストレス
職場では、意思の疎通が取れない現場社員たち。
何か問題が起きれば、矛先は決まって私。
「なんで俺が・・」という理不尽さと、毎日付き合っていました。
家に帰れば、一息つく暇もない。
妻はいつもどこかピントがズレた受け答えで、こちらの気持ちは伝わらない。
でも子供たちには「いいお父さん」でいたかった。
疲れていても、笑顔を作る。それがまた疲れる。
ストレス解消のために習い事も始めました。
ところが、それすら新たなストレスになっていく。
職場・家庭・習い事。
全方向から来るストレスで、雁字搦めの毎日。
気づけば整体への通院も欠かせなくなっていました。
体が正直に、悲鳴を上げていたのです。
地獄のスパイラル、という言葉がぴったりでした。

古い知人が持ってきた、謎のパンフレット
そんなある日のことです。
久しぶりに連絡があった古い知人が、こんなことを言いました。
「いま、こんなことを学んでやってるんだ」
差し出されたパンフレットを受け取りながら、私は首をかしげました。
・・・「ヒーリング」???
「え・・宗教の勧誘ですか?」
手を当てる?
なんか、そういう宗教あったよね・・・
え、宗教の勧誘・・・??
頭の中にそんな言葉が浮かんで、警戒心がじわりと湧いてきました。
でも知人は、あくまでも穏やかに説明を続けます。
治療ができる。
体の不調が整う。
学べば自分でもできるようになる。
宗教、ではない・・のか??
半信半疑のまま、パンフレットをじっと見つめました。
「これを学んだら、整体に通わなくていいかも?」
そのとき、頭の中でひとつの計算式が生まれました。
整体への通院代、バカにならない。
もしこれを自分で体得できたら・・?
通わなくていいんじゃないか?
今思えば、完全に的外れな発想です(笑)
でも当時の私には、それが妙にリアルな動機として刺さりました。
こうして私は、ヒーリングを学び始めることになったのです。

そして――見切り発車の、大決断
学び始めると、色々なことがありました。
(その話は、また別の機会に)
そして気づけば私は、こう考えるようになっていました。
「ヒーリング治療で、食べていく。」
長年続けてきた「雇われの身」に、終止符を打つ。
個人事業主として、自分でやっていく。
初めて感じる開放感と、初めて背負う責任感。
今思えば、あまりにも無謀な見切り発車でした。
何の実績もなく、何の保証もない。
それでも当時の私には、訳のわからない自信だけがありました。
その自信が正しかったのか、間違いだったのか――
第13話では、「個人事業主・元サラリーマン」の現実をお話しします。